私には3つ歳の離れた妹がいる。幼い頃に一緒に遊んでいた時だった。
　突然パタリと床に倒れ、動かなくなってしまった。母は慌てて、でもどこか冷静に、119番に電話をかけた。救急隊を待つ間もピクリとも動かず、呼吸も止まっていた時間もあった。
　「このまま妹は死んでしまうのかな‥」とても不安で救急車のサイレンが聞こえてくるまでの時間がとても長く感じた。
　救急隊が駆け付け熱を計ると42度だった。すぐに担架に乗せられ病院に運ばれた。入院先の病院でも何度か呼吸が止まり、パルスオキシメーターの数字がどんどん下がった。数名の医師と沢山の看護師が妹の病室に集められ、ただならぬ雰囲気が漂った。私はその時まだ幼稚園の年長だったが妹の命が危ないことを悟った。妹はより大きな大学病院に転院した。その後数日間、命の境をさまよったがなんとか命は助かった。
　だが高熱で脳がダメージを受けたせいか、重度の知的障がいが残り、獲得している最中だった言葉も失ってしまった。
　妹は現在小学校6年生だが、2歳時の様な行動ばかりだ。でも私にとっては、かけがえのないたった一人の大切な妹だ。
　妹が倒れた時に駆けつけてくれた救急車も適切な治療を受けられたのも、考えてみれば税金によって支えられていたからこその事だ。
　重い障がいを負った妹は、障害児福祉手当や特別児童扶養手当も受けている。また毎日放課後等デイサービスも利用している。その他にも多くの行政サービスを受けて生活をしている。その全てが税金によって支えられていることを母が教えてくれた。
　我が家は特に多くの税金によって不便のない生活が送れていたことを知った。
　今まで税金にはあまり良いイメージは持っていなかった。だが、とても身近で必要不可欠な大切なお金であることが分かった。
　私達はお互い支え合うことで生活を送っていくことが出来る。私達が払った税金がどこかで誰かの役に立ち、自分自身も税金によって支えられていることを思うと、とても大切なお金だと実感している。
　妹は時々、2歳児の様な純粋で屈託のない笑顔を私に見せてくれる。この笑顔は妹が、不安や不便なく幸せな毎日を送っているからこそ生まれる笑顔だ。
　これからもこの笑顔を守るために税について考え、知識を深めていきたいと思う。
　誰かの笑顔を守るために、誰かの助けとなるために、そして自分も笑顔になるために。