私が幼い頃、祖母が突然倒れたことがありました。私はその場にいなかったのですが、あとから家族に話を聞き、背筋がぞっとしました。家族はすぐに119番に電話をし、数分で救急車が到着。救急隊員が落ち着いた声で指示を出しながら応急処置を行い、病院まで運んでくれたそうです。幸い命に別状はありませんでしたが、「もし費用が高くて救急車を呼べなかったら」と思うと、とても怖くなりました。
　一方、海外の国では事情が異なります。アメリカや一部のヨーロッパ諸国では、救急車を呼ぶだけで数万円から十数万円の費用がかかることがあります。保険があっても自己負担が高く、経済的な理由で救急車を呼ばない人も少なくありません。その結果、本来なら救えたはずの命が救えず、助かる命が助からないという現実があります。海外では、救急車を呼ぶかどうかが「命の選択」になってしまうのです。
　こう考えると、日本では誰もがためらわず救急車を呼べる環境が、どれほど恵まれているのかが分かります。そして、その制度を支えているのが税金です。税金は救急車だけでなく、消防や警察、道路や学校など生活のあらゆる場面で使われています。普段は意識していなくても、私たちは常に税金の恩恵を受けているのです。
　しかし、税金は「払って終わり」ではありません。使い道に関心を持ち、無駄を減らし、必要なところにきちんと使われるように考えることも大切です。国のお金は無限ではなく、救急車の無料利用も、財政や利用状況によっては維持が難しくなるかもしれません。
　税金によって守られているのは道路や建物だけではなく、私たちの命そのものです。もしその税金がなければ、私の祖母も助からなかったかもしれません。助かる命が確実に救われる社会を守るために、私はこれからも税金の仕組みや使い道に関心を持ちたいと思います。そして、今ある制度を当たり前と思わず、そのありがたさを次の世代まで伝えていきたいです。
　祖母が元気でいてくれる今、あの日の事を思い出すたびに、救急隊員や税金で支えられた制度への感謝が込み上げてきます。私は、この国に生まれたからこそ守られた命があることを忘れず、未来も誰もが安心して助けを呼べる社会であってほしいと強く願っています。そして、その社会を支えるために税を納めることは、私たち一人ひとりの大切な責任なのだと思います。