「税金」と聞くと、真っ先に祖父の昔話を思い出す。祖父の若い頃は扶養家族が多く、控除の関係で所得税を納める必要がなかったそうだ。祖父は税金を払えないことを悔しがっていた。働いて国に貢献したかったのだと幼い姉と私に向かって語った。話を聞き、私も姉も驚いた。税金を払いたくないと思っていたからだ。祖父と私たちで、税金に対する考え方がこれほど違うとは思っていなかった。
　私が税金に対して良い印象を抱いていなかったのは、その使い道がきちんと周知されていないと感じていたからだ。実際、不適切な税金の使い方を非難する新聞記事や、インターネット上の投稿を見たこともあった。そのため私は、税金を良くないものと考え、所得税を払う必要がなかった祖父を羨ましいと思ってしまったのだ。
　祖父と私の税金に対する考え方の差は、どうして生まれたのだろう。祖父にあって私に不足しているもの、それは税金にまつわる知識だ。そこで私は税金について調べてみた。
　国税庁のホームページには、中学生一人当たり約百万円の税金が使われているとあった。タブレットや教科書代もその一部で、私が勉強するために多額の税金を使わせてもらっていたことに気が付き、感謝すべきだと感じた。税金の使い道に対して否定的な考えを持っていた私は、インターネットや新聞を見たときに、批判的な意見ほど目に留まりやすくなってしまっていたのだ。そして、知識不足がゆえに税金を悪だと決めつけていた。納税をしたり、税金の恩恵を受けたりしているならば、情報を受動的に受け取るのではなく、能動的に調べることが大切だと思った。
　学校にはタブレット保管庫というものがあるが、これにも税金が使われていると知った。しかし、私の学校ではタブレットは毎日持ち帰るので、それは現在使われていない。このように、必要だと思って税金を使っても、機能していないケースが他にもあるはずだ。だがそれは、私たちのために万全を期して設置されたものであり、税金の使い道が間違っていたとは思わない。しかしこのような事態は、私たちが当事者意識をもって情報発信をしないと明るみに出ることはない。
　ほんの少し、時間を使って調べてみただけだが、祖父の話に対して抱いた感情は間違いだったと感じた。税金に対する知識が十分にあった祖父は、納税が家族のため、国のためになると分かっていたから、税金を払えないことを悔しがれたのだ。
　私たちが前向きな気持ちで税金を納めるためには、国が税金の使い道を透明化すること、私たちが主体的に税金について知ることが必要不可欠だ。そして、使い道に改善の余地があるならば、自ら声を上げ、より有意義に税金が使われるように行動するべきだ。国と国民が、相手任せにすることなく、対等に歩み寄ることが今の社会では必要だ。