小学5年生のある日、突然の病で入院することになった。その長い入院生活のベッドの上で感じたのは、自分の体の弱さに対する心配と「家族に迷惑をかけていないかな。」という不安だった。そんな思いを抱えながらただただベッドに横たわる日々ばかりが続いた。幸いにも、たくさんの先生や看護師さんが治療してくれたおかげで、私の命と健康は救われた。そして退院後、両親が支払った医療費が、想像していた金額よりもずっと安かったことに驚いた。これは、調べてみると日本の「医療保険制度」のおかげだと知った。私の命や健康が救われたのは決して当たり前のことではなく、税金という形で社会全体が支え合っているからこそ実現したのだとこの経験を通じて深く感じた。
　この経験は、私に税金の本当の意味を教えてくれたと思う。私を救ってくれた医療だけでなく、私たちが安心して暮らせる街の道路、放課後に友達とテニスをしに行く公園、そして日々の学びを支える学校も、すべて税金によって維持されている。災害が起きたとき、私たちを助けに来てくれる消防士や自衛隊、そして被害を受けた街を復旧させるための費用も、税金で賄われていることが分かった。
　日本人は、税金に対してネガティブな感情を抱きがちだと思う。政治の無駄遣いや不祥事が報じられるたびに、私たちの税金が無駄に使われているのではないかと不信感を抱くこともあると思う。しかし、税金が私たちの生活の根幹を支えているという事実は変わらない。税金は、私たちが社会の一員として、互いに助け合い、支え合うための最も基本的な仕組みだと考える。
　税金に助けられた経験をした私だからこそ、今、色々な人に伝えたいことがある。それは、税金は決して他人事ではなく、私たちの命そのものにつながっているということだ。私が入院したように今、この国のどこかで入院をしている人や税金によって助けられた人がたくさんいると思う。そんな人たちのために私にできることは、この経験を通じて得た感謝の気持ちを多くの人に伝えていくことだと考える。税金は「負担」ではなく、私たちの命を支える「命綱」なのだと、声を大にして伝えたい。
　私は、このバトンを、感謝の気持ちと共に未来へとつないでいきたい。そして、税金が持つ本当の意味を理解し、一人一人が社会を支え合える、そんな温かい国になってほしいと心から願っている。