「俺はたくさんのものを失ったけれど、今の生活も捨てたもんじゃないよ」
　そう笑顔で言ったのは、車椅子を使って生活している私のおじいちゃんだ。昔、大きな木に登ったところ、足を滑らせて落ち、首の骨を折ってしまったそうだ。それ以来、自分の足で歩くことができなくなってしまった。私はその話を聞いたとき、とても驚いた。どれほど悲しくて、どれほど辛かっただろうと想像したからだ。それでも、おじいちゃんは明るく笑って、今の生活も悪くないと言った。私はその言葉の意味を考えた。歩けなくなるなんて、 私だったら耐えられない。でも、おじいちゃんは前を向いて生きている。なぜなのか。その理由は、福祉サービスがあるからだ。おじいちゃんは、さまざまな支援のおかげで安心して毎日を過ごすことができているのだ。
　例えば、週に数回、 介護ヘルパーさんが家に来てくれて、食事の準備や着替え、お風呂などの手伝いをしてくれる。車椅子やベッドも、市から借りている特別なものだ。また、病院へ通うときには、福祉車両のレンタルを利用して安全に移動することができている。
　私は最初、どうしてこんなにたくさんのサービスが使えるのか不思議だった。すると、お母さんが教えてくれた。
「それは税金のおかげなんだよ」
私は驚いた。税金というのは、大人がしぶしぶ払っている、めんどうなものというイメージしかなかったからだ。でも、おじいちゃんの生活が成り立っているのは、その税金が支えてくれているおかげだと知り、私は考え方が変わった。
　改めて思い返してみると、私たちの生活には、税金によって支えられているものがたくさんある。病院で受ける治療、学校の教科書や給食、整備された道路や公園。どれも当たり前のように思っていたが、実は見えないところで多くの人たちの税金が使われて、私たちの暮らしを支えてくれているのだ。おじいちゃんの生活もまた、見ず知らずの誰かが納めた税金によって支えられている。そう思うと、 税金というのは、ただのお金ではなく、人と人とをつなぐ「絆」のようなものだと、私は思った。
　私は将来、大人になったら、しっかりと税金を納めようと思う。自分のお金で、どこかの誰かを支える力になれるのなら、それはとても意味のあることだと思うからだ。
　おじいちゃんのあの笑顔の裏には、たくさんの人たちの支えがある。そのことを忘れずに、感謝の気持ちを持ち続けながら、これからの生活を大切にしていこうと思う。